『BOLT』『LIFE』『GOOD YEAR』の3つのエピソードで構成された本作は、2015年から2017年にかけて製作された。
監督は、『夢みるように眠りたい』『我が人生最悪の時』『弥勒 MIROKU』などを手がけてきたほか、プロデューサーとしても活躍する林海象。主演は、林海象と何度もタッグを組んできた盟友、永瀬正敏。そのほか、佐野史郎、金山一彦、後藤ひろひと、大西信満、堀内正美、月船さららが脇を固めるほか、佐藤浩市が声の出演を果たした。
現代美術家、ヤノベケンジが香川・高松市美術館に創り上げた巨大セットや防護服などの近未来的なデザインも圧巻。
第22回上海国際映画祭パノラマ部門にて正式招待作品、京都国際映画祭2019に特別招待され、劇場公開が望まれていた作品がいよいよ劇場公開される。
ある日、日本のある場所で大地震が発生。その振動で原子力発電所のボルトがゆるみ、圧力制御タンクの配管から冷却水が漏れ始めた。高放射能冷却水を止めるため、男は仲間とともにボルトを締めに向かう。この未曾有の大惨事を引き金に、男の人生は大きく翻弄されていく。
大地震の影響で原子力発電所のボルトがゆるんだ。冷却水が漏れ始めた圧力制御タンクの配管のボルトを命をかけて締めに向かう男たちの物語。
原発事故後、避難指定地区に独り住み続けたひとりの老人が亡くなった。遺品回収に向かった男が直面する現実。
クリスマスの夜、車修理工場に暮らす男の前に現れた一人の女。夢か幻か。
京都府京都市生まれ。映画監督、映画プロデューサー、脚本家。東北芸術工科大学教授。
映画では『夢みるように眠りたい』『私立探偵 濱マイク 3部作』『探偵事務所 5シリーズ」『彌勒』、テレビドラマでは『黒蜥蜴- BLACK LIZARD-』他、作品多数。
2019年、監督作品『BOLT』が「第22回上海国際映画祭」のパノラマ部門(受賞対象外の話題作品)の正式招待作品として上映。2020年、監督デビュー作である『夢みるように眠りたい』が、「英国映画協会が選ぶ、1925~2019年の優れた日本映画95本」の1本に選出。また、映像のみならず舞台の世界でも活躍の場を広げており、2019年には舞台『ロストエンジェルス』の演出を、2020年には舞台『かげぜん』の演出を手掛けた。
永瀬正敏 episode 1.2.3 |
佐野史郎 episode 1 |
金山一彦 episode 1 |
後藤ひろひと episode 1 |
テイ龍進 episode 1 |
吉村界人 episode 1 |
大西信満 episode 2 |
堀内正美 episode 2 |
佐々木詩音 episode 1 |
佐藤浩市(声) episode 1 |
月船さらら episode 1.3 |
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●脚本・監督:林海象
●プロデューサー:根岸吉太郎
●美術:ヤノベケンジ / 竹内公一 / 磯見俊裕
●撮影:長田勇市
●プロデューサー:根岸吉太郎 / 林海 象 / 大和田廣樹 / 鈴木仁行 ●サポートプロデューサー:金田直己 / 吉村 弘 / 川南和彦 / 宇津井武紀 ●ラインプロデューサー:片岡大樹 ●美術:ヤノベケンジ / ウルトラファクトリー ●撮影:長田勇市 ●撮影応援:赤松亮 ●撮影助手:村岡一誠 / 仲村逸平 / 福田健人 / 佐藤安稀 / 笹木かのん / 佐藤元紀 / 六澤友香 ●照明助手:拓殖勇人 ●録音:浜田洋輔 / 倉貫雅矢 ●録音助手:田中雄虎 / 遠藤樹美花 / 尾野村有紀 ●衣装装着:野村啓介 / 丸岡純平 / 菅原史哉 / 熊澤ありさ / 安里紗彩 ●制作:佐藤明日翔 / 本田祐衣 / 木村 成 / 石井梨帆 / 高橋 藍 / 今西純穗 / 塚田愛梨 / 常見愛実 ●演出助手:馬渕 修 / 佐藤利樹 / 鈴木芽衣 ●美術助手:森 彩華 / 横山文昭 / 米村優人 / 松窪亜里沙 / 大友諒太郎 / 矢野淑子 / 橋爪陸奈 ●衣装:辻野孝明 ●デスク:古川千帆 / 千葉癸美香 ●スチール:タイナカジュンペイ ●メイキング:青木兼治 ●編集:阿部誠人 ●ONLINE:酒井伸太郎 ●VFX:照屋拓己 / 呉岳 / アゴスティーニ・パオラ ●音楽:めいな.Co ●サウンドデザイン:浜田洋輔 ●監督補:関谷 崇 ●脚本:杉山嘉一 ●挿入歌:杉瀬陽子「太陽の子」●協力:高松市 / 高松市美術館 / 讃州製紙株式会社 / ジャンボフェリー / 金沢21世紀美術館 / 豊田市美術館 / 高野山讃岐別院 / うどん市場兵庫町店 / 京都芸術大学
●プロデューサー:根岸吉太郎 ●監督補助:杉山嘉一 ●攝影師:長田勇市 ●攝灯隊:芳賀脩 /新田成実 ●ガファー:大森健太朗 /岩崎駿也 ●録音:石寺健一 ●録音助手:二木隆誠 ●フォーリーアーティスト:福田健人 /長澤志保 ●音楽:坪川拓史(ペコデルボオルケストロ「日曜日に」) ●美術デザイン:竹内公一 ●美術:大須賀文香 ●美術協力:竹内悦子 ●美術助手:鈴木優衣 ●絵画:瀬島匠 ●衣装:小野峰秀(SQUAT) ●特殊造形:宗 理起也 ●蜘蛛造形:栩野幸知 ●なまず:シーベルト ●スチール:岡部ユミ子 ●制作:佐藤明日翔 ●デスク:千葉癸美香 ●配給:片岡大樹 ●ロケコーディネート:岩田秀敏 / 岩崎孝正 ●現場指導:吉田太一(キーパーズ) ●朝比奈央之(キーパーズ) ●英語字幕:潮崎祥平 ●編集:千葉愛美 ●編集助手:富田大秀 ●VFX:川田陽亮 ●車両・劇用車:葛原学 ●4Kメイキング:佐藤安稀 ●東北芸術工科大学 学生チーム(現場撮影班)田中賛美 / 黒田恵利 / 伊東大毅 / 布施拓哉 / 河野なな子 / 松本樹(VFX班)海老名宏平 / 石川純一
●プロデューサー:根岸吉太郎 ●協力プロデューサー:宇津井武紀 ●撮影監督:長田勇市 ●撮影:小波祐介 / 村岡一誠 ●音楽:めいな Co. /
袴田晃子 ●演出:萩生田宏治 / 関谷 崇 ●録音:石寺健一 ●録音助手:中島 唯 ●美術:磯見俊裕 / 黒川通利 / 斎藤洋亮 ●人魚造形:宗理起也 ●装置:栩野幸知 ●メイク:宮崎智子 / 笹原友香 ●スチール:岡部ユミ子 ●制作:川南 絆 / 坂井紀里子 ●デスク:森宗厚子 ●ケータリング:長澤英子 / 美味しんぼ倶楽部 ●ロケコーディネイト:岩田秀敏 ●配給:片岡大樹 ●英訳:松田知泰 ●編集:栗谷川純 ●オンライン編集:酒井伸太郎 ●VFXアーティスト:石澤智郁 / 及川勝仁 ●サウンドデザイン:浜田洋輔 ●編集助手:阿部誠人 ●東北芸術工科大学 学生チーム(演出・制作)大森健太郎 / 布施拓哉 / 岩崎駿也 / 葛原学 / 有坂歩 / 八巻一則 / 広谷穂里 (録音助手)二木隆盛 / 伊藤大穀 (撮影・照明助手)長澤志保 / 河野なな子 / 槙唯人 / 石川純一 / 新田成実 / 喜多川拓 (美術助手)富田大秀 / 松崎光博 (劇中車制作)福田健人 / 冨樫真雪 / 遠藤麻美 / 菅原ひかる / 佐藤佑哉 / 菅原史哉 / 鈴木侑也 / 佐々木奏音 / 鈴木萌由 / 本郷詩乃 / 松本 樹 / 寒河江夏生 (学生CG班)川田陽亮 / 土橋京侑 / 先﨑大朗 / 中田昇子 / 押切南奈 / 西村芽衣 / 小梨晶子 / 高橋良太 / 斎藤有里 / 吉永晴乃 / 鈴木郁也
宮城県 | |
フォーラム仙台 | 終了 |
福島県 | |
まちポレいわき | 終了 |
山形県 | |
フォーラム山形 | 終了 |
長野県 | |
松本CINEMAセレクト | 終了 |
茨城県 | |
あまや座 | 終了 |
東京都 | |
テアトル新宿 | 終了 |
イオンシネマむさし村山 | 終了 |
ユーロスペース | 終了 |
キネカ大森 | 終了 |
シアターギルド代官山 | 終了 |
神奈川県 | |
ジャック&ベティ | 終了 |
イオンシネマ座間 | 終了 |
あつぎのえいがかんkiki | 終了 |
埼玉県 | |
イオンシネマ浦和美園 | 終了 |
愛知県 | |
名古屋シネマテーク | 終了 |
刈谷日劇 | 終了 |
京都府 | |
イオンシネマ京都桂川 | 終了 |
出町座 | 終了 |
大阪府 | |
シネヌーヴォ | 終了 |
シネヌーヴォX | 終了 |
シアターセブン | 終了 |
兵庫県 | |
元町映画館 | 終了 |
大分県 | |
別府ブルーバード劇場 | 終了 |
福岡県 | |
KBCシネマ | 終了 |
沖縄県 | |
桜坂劇場 | 終了 |
これは林海象監督の人間力だ。福島、山形、京都、高松、それぞれの土地と住民、学生と深く結びつきながら、彼の7年間の粘りがなければ『BOLT』を世に問うことは出来なかった。永瀬正敏さんの創りだす男は権力が葬り去ろうとする今も続く原発の闇を静かに告発するだろう。十年前の出来事を見詰めるだけでなく、その時間を使って、大胆にもヤノベケンジ氏の作品をもセットにする実験も経て、物語として結晶させた稀有な映画である。
林海象監督はまぎれもない私の師匠である。彼の事務所である映像探偵社の門を叩いたのは私が21歳の夏だった。海象さんは雇う事は出来ないが一緒に映画を作ろうと言ってくれ、私は電話番と細々とした監督のお手伝いをし、映画に触れることになった。その頃の海象さんは、多岐にわたる映像関連の仕事の打ち合わせを外でして来ては、事務所に戻ると私の前でイメージを膨らませて行った。貪欲なその姿は逞しく憧憬する映画監督の姿そのものだった。今だからわかるが全く何もないところから映画を作り出す作業は至難の技だ。しかし、海象さんは瞬時に浮かんだイメージをみるみるうちに具体に変えていった。まるでマジシャンかのように。たくさんの映画のイメージが海象さんの中に広がっていた。どの話もワクワクするような映画的な独特なアイディアに彩られているものばかりだった。
私が最初に“映画”の現場に参加できたのは『フィガロストーリー』という海外との合作映画の日本篇『月の人』という作品だった。海象さんはスタッフにモチベーションを与える天才だ。私みたいな右も左もわからない未熟なスタッフにも「とにかく高いところを探して来い!ヒロインは高いところに登り、月からのやってくる人を待つのだ」と指令を放つ。その日から私は終始上を向いて歩き、電車に乗っては人が登られそうな高い場所を車窓のガラスにへばりついて探した。一つだけだったが、ロケ場所を監督に気に入ってもらえた時は本当に嬉しかったことを覚えている。関わる人間を巻き込み、そこに湧き上がる力を映画の原動力にする。林海象の映画哲学がそこにある。
林海象監督の代表作である私立探偵濱マイクのシリーズには、ブルータスという雑誌の夢の映画のポスターを作るという企画から立ち合わせてもらった。横浜黄金町の日劇という古い映画館の前で撮られたその写真から映画が生まれた。どこで映画を撮るのかという拘りがもう一つの林海象映画の哲学だ。主人公は私立探偵で映画館の二階に事務所を構えているが、探偵の元に訪れる依頼人は皆、映画館の切符を買ってモギリを通らないといけない。そのアイディアを海象さんは瞬く間に閃き、次にストーリーも何も決まっていないのに、この映画は三部作だと宣言する。その話を聞いていた者たちをみるみるうちに魅了し巻き込んでいくヴァイタリティこそ林海象監督の真骨頂だ。
海象さんは若いスタッフと共に映画を作ること、一緒に映画とは何かを探求することを楽しみ、決して達観せずに常に夢を見ている。だから、ベテランのスタッフがそこに混じったとしても忘れかけていた映画への初期衝動を思い出させられてしまうから、林海象作品には常に若々しさが漲っているのだと思う。
林海象監督の最新作『BOLT』は、まさに今も変わらぬ彼の哲学が貫かれていた。撮影監督の盟友長田勇市氏をはじめ数名のプロのスタッフ以外は、映画創作を目指す大学生スタッフだと聞いた。そして、この作品も三作の短編で構成されている。しかし、この作品は最初から三部構成だったわけではなかったらしい。『GOOD YEAR』を撮ってから次なるイメージが生まれ、時間も場所もテーマも違う作品が連鎖的に作られていったようだ。まったく独立したモチーフであるにもかかわらず、三作とも主人公を永瀬正敏が演じていたのは必然か。その三作の前後にある映像をフラッシュバックさせることで一人の人間が辿った時間に仕立て上げられている。東北で映画を作ることを出発点にし、東日本大震災が監督に与えた影響がイメージを結んだ三作。その作品と作品のあいだに、一人の男の因果を辿る精神の深淵を覗き込んだ感覚に陥った。
海象さんは、昔、絵空事を現実的に見せることが映画だと教えてくれた。『BOLT』のヤノベケンジさんが作った原子炉のオブジェとSF映画のような作業服や『GOOD YEAR』の人魚など完全に虚構であるビジュアルを使って映画を撮る。なんでも突っ込まれる時代だが、海象さんはそんなことを気にもせず虚構を貫き通す。俳優の肉体と感情を通して映画的リアリティーを生み出すことに尽力する。そして、それが観客に届くと信じている。
『真実と虚偽の混淆(こんこう)から生じるものは、虚偽である。虚偽は、もしそれが雑気(まじりけ)のない虚偽であれば、真実を作り出す』というロベール・ブレッソンの言葉を思い出した。観る者はそれが現実にない空想の物だと知りながら、眼前のスクリーンに映し出される光景に取り込まれ自分の鼓動や血潮を感じる。まさに、純度の高い虚構の中で生きる人々の呼吸する姿に真実を見出す映画だった。これこそ映画にしか出来ないことだと私は改めて思った。
私の師匠、林海象監督はお会いするたびに、新しい映画の構想を話してくれる。そこにはかつて憧れていた映画が携えていたロマンが溢れている。熱のこもった海象さんの語りには、今の時代が喪失した映画創作のヒントが詰まっていて、思わず惹き込まれてしまうのだ。
次は何を映画にされるのか楽しみでならない。